スピーチ(演説):
大勢の前で自分の意見や主張を述べること
スピーチという行動は、人間のみで見られる行動で、その進化は良く分かっていなかった。これまでは、唸り声や叫び声などの音声を発する行動が、人間のスピーチの発達につながったと考えられてきた。一方、人間のスピーチは、祖先の霊長類が持っていたある種の顔の運動に由来すると初めて提唱したのが以下の研究。
Ghazanfar et al. (2012) Cineradiography of Monkey Lip-Smacking Reveals Putative Precursors of Speech Dynamics Current Biology
この論文の著者らは、サルが示す「咀嚼 Chewing」と「唇のふるわせ Lip-smack」に注目し、X線動画でそれぞれの動きを定量化した。
Lip-smackとは、唇を小刻みに上下に震わせる行動。多くの霊長類で、他個体に対する親愛を示す行動と言われている。Lip-smackの動画 (0:08~)
X線動画の解析の結果、サルのLip-smackのときに舌・唇・舌骨が示すリズムは、人間のスピーチの時に特徴的な5Hzのリズムに似ていた。一方、咀嚼運動は、5Hzのリズムを示さなかった。
そして、さらに重要な点として、Lip-smackのときと、咀嚼運動のときには、口全体の運動パターンが異なっていた。これは人間においてスピーチと咀嚼運動の運動パターンが異なることを示した先行研究と一致する。
一般的には、文化的な産物だと考えられてきた人間のスピーチという行動は、祖先の霊長類における顔を使った情報伝達に由来するのかもしれない。