地球から宇宙を見上げたときに、太陽と月の大きさはほぼ同じ大きさだ(視直径、約0.5度)。そのおかげで、地球上では、太陽が外縁だけを残して月に隠れる現象、すなわち金環日食を観察することができる。太陽と月の見た目の大きさがほぼ同じに見えるのは奇跡に近い偶然なので、金環日食は太陽系では地球でしかみられないのではないか?
ということで、地球以外の惑星から見たときの太陽と衛星の大きさを計算して、わかりやすく図にしてみた。太陽と衛星の見た目の大きさがほぼ同じに見えるなら、その惑星でも金環日食が観察できる可能性がある。(衛星を持っていない水星・金星と、太陽から遠すぎる天王星・海王星・冥王星は除外した)
まずは地球から見た場合
毎日見ているように、太陽と月の大きさはだいたい同じ。
火星から見た場合
火星には、フォボスとダイモスといういびつな形をした2つの衛星がある(今回は簡略化して球として示した)。これらの衛星は、直径が小さいため、太陽を完全に隠すことはできないようだ。つまり、日食は起こっても、常に部分日食ということになる。
なんと、NASAの火星探査機が、火星の衛星フォボスが太陽の前を横切る「火星での日食」を撮影した動画があった。
やはり火星で見られるのは、部分日食である。
木星から見た場合
木星には、66個の衛星があるらしいが、そのうちガリレオ衛星と呼ばれる4つの大きな衛星だけを調べてみた。さすがに木星くらい太陽から離れると、太陽の見た目の大きさがすごく小さくなる。そのせいで、衛星の大きさが相対的に大きくなり、どの衛星も太陽をすっぽり隠してしまうようだ。つまり、金環日食は見られず、「皆既日食」が頻繁におこっているだろう。
木星上の黒い地点で、皆既日食が観察されていたはず。
土星から見た場合
土星には64個の衛星があるが、最大の衛星をもつ外衛星群の4つに注目した。土星上で太陽を見ると、地球上と比べて直径は約1/10、面積は約1/100になってしまう。やはり土星でも、3つの衛星が太陽よりも見ため上の大きさが大きく、金環日食ではなく完全な皆既日食になってしまう。
【結果】
金環日食は、地球上でしか見られない極めて珍しい天体ショーだった。地球に生まれたことを感謝。
5月21日は日本各地で晴れるといいですねー。
(黒後家蜘蛛の3巻に収録されている「欠けているもの」は、このエントリーを読んだ後に読むと面白いと思います)